たこ焼きの本場関西

関西スタイル

 

「たこ焼き」と言えば、どことなく気分が重くなります。というのは時折我が家では「夕飯がたこ焼き」という時があります。

そういう時、いつもたこ焼きを焼くのは「私の役目になっているのです。

もちろん家族は「たこ焼きのオッチャン頑張って」といって、いつもは夕飯には出てこない発泡酒ではない、本物のビールが出てきます。

しかし、それをゆっくり飲みながらたこ焼きを食べる事は私には許されていないのです。

「焼く係」を任される代償としてビールが出てくるだけで、食事の時間の大半は、たこ焼き器の前で立ったままたこ焼きを焼き、で聞く多物からみんなの皿の上にどんどん乗っけていく、その合間を見て自分で失敗作を食べ、ビールを飲むという時間になります。

という事で、本当に楽しくビールを飲みながらたこ焼きを食べて、今日の夕飯は終わったという感覚は一回もありません。

また、関西には家庭に一個はたこ焼き器があるとはよく言われますが、確かにうちにもあります。だからと言って、いつもうまくたこ焼きが焼けるわけではないのです。

関西人がたこ焼きを作るとき

たこ焼きの粉の混ぜ具合や油の調子、たこ焼き器と油の相性などで、どんなにうまくやろうとしてもきれいに裏返る事がなく、どこかいびつな形になってしまったり、焼け方がうまくいかなくなってしまったりすることがあり、つい、イライラとしてしまう事があります。

別に売り物ではないのだから多少形が崩れようが、タコがはみ出ようがいいとは思うのですが、そこが関西人の悲しい所、家で自分がたこ焼きを焼く以上は、きれいなたこ焼きを焼いて家族の皿に乗せるというのがプライドにいつの間にかなっています。

たこ焼き器も長い間使っていると油や粉の調子だけではうまく焼けない部分が出てきたりするのがごく普通の事です。

しかし、「今日はたこ焼きが晩御飯だからお父さん頑張ってね」と言われてしまうと、やはりついきちんとしたものを作るのが父としての役目、関西の家の伝統と思ってしまうのが、関西人の性なのです。

粉の調子もよく、油もうまく乗っている時はきれいなたこ焼きが次々と出来、そんな時は、ビールも本当においしく思え、「父」としてだけでなく「関西人」として胸が張れるような気になります。

関西人のたこ焼きへの思い

客観的に見れば何をムキになっているのかと思われると思うし、自分でも時々も「何をこんなにうまく焼けないからってイライラしているのだ」と思う事があります。しかし、これが、関西の血のせいなのだと思ってあきらめています。

一方で、たこやきと並んで人気のたい焼きが登場したのは、明治時代と言われています。

庶民の手が届かない高級魚の鯛(たい)をかたどった金型に水で溶いた小麦粉の生地を流し込んで、これにあんをはさんで、焼き上げる手法が全国的に普及しました。

高級魚の鯛を食べるかわりには、小麦粉とあんを食べることでぜいたく感を味わいます。まさに、庶民の知恵のたまものが、たい焼きだったのです。

たい焼きの伝統では小豆(あずき)あんの商品が主流ですが、現在では、野菜や果実を原料として使用した「変わりあん」も登場していて人気を博(ひく)しています。

11月に入ると、熱々のたい焼きが恋しい時期です。たい焼きは、明治からの伝統的な商品ですが、現在では生地に創意工夫を凝(こ)らして白く仕上げたものなど、新商品も続々と登場しています。

こうして、高級魚を食べられなかった庶民の知恵の結晶であったたい焼きの伝統は、現在では、庶民から富裕層までが楽しむお菓子となっています。

たい焼きを購入して、店頭から持ち帰り、少し冷めた場合は食べる前にストーブの上部やオーブン、電子レンジで加熱するとよりおいしく食べられます。

取り寄せの場合は焼き上げた後に冷凍しているので、レンジ解凍が必要です。ただ、あんの風味が失われるので加熱しすぎはよくありません。

各専門店が指示する時間より短めにして温めつつ、よい加減を探ってください。

たい焼きは、お祭りの露店や専門店のほかに、全国の百貨店の地下食品売り場のたい焼きコーナーでも売られています。

小麦粉と少量の砂糖を合わせた生地でつくる皮は配合や焼き方で、食感、味や印象といった個性が強く出でます。

たい焼きの皮は、もちもちしつつ、パリッとした食感で通常のたい焼きよりも皮が薄い方が人気があります。

これは、たい焼きの購入者のおもな目的は、生地というよりも「あん」だからです。たい焼きを小麦粉の生地ではなく、「あん」でふくらませた方が「あんがぎっしり詰まっていたお得感がある」と購入者が判断するからです。

あんは、甘すぎずほどよく塩分も感じられるものがベストです、しかもしっぽまでぎっしりとあんが詰まっていることが必要です。

たい焼き愛好者は、生地の薄さとあんの充実度をしっかりと確認しています。たい焼きの伝統として、たい焼きの皮を小麦粉であえてふくらませないことが伝統の老舗のたい焼きなのです。

伝統のたい焼きは、あんでたい焼きをふくらませて消費者に還元するのです。

本流のたい焼きは、けっして小麦粉と水でたい焼きを大きくしてあんを少なくするようなことはしないのです。

これは、たい焼きとは、あくまで高級魚「鯛」の代用品だからです。たい焼き=「小麦粉」ならもはや「鯛(たい)焼き」ではないのです。